映画『この世界の片隅に』を見てきました(感想・レビュー)
元旦ですが夕方には特にすることもなくなったので映画館に行ってきました。
妖怪ウォッチでも見ようかなぁと思ったんですがニュースサイトやツイッターで少しだけ話題になっていた『この世界の片隅に』も気になったので、そちらを見ることにしました。
「元旦なんかに映画館に行くなんて奇特な人間なんて自分ぐらいしかいないだろ」なんて思っていたのですが、意外と人が入っていて驚きました。全座席の7割ぐらいは埋まっていたかと思います。
元旦にも関わらずそれだけの人が入っている程に話題になっているということでしょうか。
感想
事前情報は戦時中の広島が舞台の物語ということぐらいですが、実際の内容は戦争前~戦後のかなりリアルな当時の生活が描かれていました。
他の戦争物語と少し違うところは主人公の旦那が戦争に駆り出されるのですが、ずっと帰ってこなくなるのかと思いきや時々帰ってきますし、終戦後も無事に帰ってきました。この手の話だと旦那はそのまま帰ってこなかったり最後の最後に帰ってきて話が終了するようなイメージだったので少し意外でした。
ただし、重苦しい内容ばかりではなく映画館の中から度々笑い声が聞こえてくるような面白い内容もありました。
!!以下ネタバレ込みの感想になります!!
ネタバレ込みの詳細感想
物語序盤、戦争が始まる前の豊かな日本を見ることができたように感じられます。主人公たちが子供ということもあるため明るい雰囲気でした。
数年後、主人公が大人になり結婚の話がやってきます。いきなり男性の方から主人公と結婚したいと男性と親が一緒に主人公の家にやってきますが、これって昔の風習とかそういったものなんでしょうか。
ただ、「嫌なら断っていいのよ」と言われていたので、女性側にも相手を選ぶことができたということが伺えました(家によっては親が問答無用で結婚を決めてしまうこともありそうですが…)。
さて、紆余曲折(?)あって主人公と先ほどの男性は結婚することになりました。
自分で勉強したご飯の作り方などを実践して、時には失敗することもあるなど面白い描写もあったり、義姉が嫁ぎ先の旦那と死別して帰ってきて小姑よろしくな嫌がらせを受けたりしますが、なんだかんだで旦那家族と仲良くやっていく様子は見ていて微笑ましくなりました。
戦局が厳しくなり、舞台となる呉にも空襲が頻繁にやってきます。
空襲といえば夜中にやってきて焼夷弾を落としていくイメージでしたが、昼間に戦闘機から機関銃で民間人を狙ったり時限式の爆弾を落として空襲後に爆発させるといった描写がありました。これまでテレビドラマで見てきた爆発したり燃えたりするような空襲と違ってとても生々しく、かなり恐ろしくなりました。
終盤になり主人公が広島の実家に帰ると言い出して「これはもしかして…」と凄く嫌な予感がしましたが、予想は外れて主人公が帰るその日の朝に原爆が落とされます。
原爆に対する表現もリアルで、光ったと思ったらその後に地震が訪れ、その後に呉に広島の回覧板が飛んできたというご近所さんの会話や、家の前の木に飛んできたと思われるふすまが引っかかったりしています。
はだしのゲンのほか、小学校の授業で広島で被爆体験談などの恐ろしい話は見聞きしたことがありますが、近隣ではどのようなことがあったのか、というのが表現されていました。
米軍が戦闘機から原爆投下予告のビラがたくさん撒き散らされます(こんなこともあったんですね)。拾ったら軍に渡すようにと指示されているのですが、物の無い状況なので提出せずにトイレの紙に使われていたのは少し面白かったです。なんだかんだでお上の言うことなんて聞かなかったのが実情なんでしょう。
また、終戦を知らせる玉音放送が流れ終わると他人事のような緊張感の無い様子で「終わった?」「結局負けたの?」と言っていました。
学校教育で受けた個人的な終戦のイメージでは国民全員が絶望したり嘘だと信じなかったりしていたと思っていましたが、皆が皆そうではなかったということが伝わってきました(しかし、家族を亡くした主人公や義姉は泣き崩れていました。)
最後に、広島で母親をなくした子供と出会います。
物語中盤で主人公は右手で姪っ子と手をつなぎ、時限式爆弾の爆発を受けて姪っ子が亡くなり主人公自身も右腕を失います。
対して出会った子供は反対に母親が左手で子供と手をつないで、母親は右腕が吹き飛び全身がボロボロになってなくなります。
そして子供が右手のない主人公を母親と間違えくっついていくようになり、最後には呉の家へと連れ帰って一緒に暮らすようになります。
『永遠の0』でも現代の主人公達が祖父が実は違う人で、実は戦時中に特攻して無くなっていたということがあったように、当時は今と違って複雑な環境の家庭が多かったのかもしれないですね。
まとめ
当ブログ内の文中に何度も登場していますが、本当に当時の「リアルな様子」が描かれていると感じました。
実際に監督インタビューを見ると何度も広島へ足を運び、当時を知る人たちから話を聞いて製作していると答えています。なのでかなり当時の様子が再現されているのではないでしょうか。
【インタビュー】「この世界の片隅に」片渕須直監督に訊く…「この世界にすずさんの実在感を求めて」 | インサイド
映画を見た後に原爆投下のビラについて検索しましたが実物を掲載しているサイトを発見しました。まさに劇中もこんなビラでした。
原爆投下予告ビラ
決して重苦しいだけの話ではなく苦しい生活の中でも笑いがあるような、当時の様子を知ることができる数少ない作品でした。
小学生の頃にほたるの墓を学校で見せられた記憶がありますが、ぜひこちらも小学生に見てほしい作品だと思います。
映画の感想は以上です。
以下、ドラマ版や原作漫画についても少しだけ調べてみました。
ドラマ化もされていた
5年前に北川景子さんが主演でドラマ化されているようです。
映画の主人公は小さくてのんびりした可愛らしいイメージだったので、北川景子さんがどのように演じていたのか非常に気になります。
また、映画では戦時中の細かな生活の様子を描かれていましたが、ドラマ版では旦那が結婚前に通じていた遊女との話が大きく描かれているようです(映画版ではほとんど描かれていませんでした)。
一体どんな話となっているのか、再放送があればぜひ見てみたいです。
原作漫画が発売されている
こうの史代さん原作の同名タイトルで、上・中・下の全三巻で発売されています。
ドラマ版での遊女の話も原作では描かれているため、原作を見れば映画で謎めいていた部分も理解できるかもしれないです。
時間があればまた読んでみたいと思います。